予防接種
ワクチンについて(ワンちゃん編)
特に子犬の場合は、生まれる時に親から貰った免疫(移行抗体)が残っているので、これが切れる時期を見計らってワクチンを接種することが大切です。
また、健康状態や体質によっては副作用の危険や十分な免疫を獲得できない場合もありますので、
最初のワクチンの前には視診・聴診などの診察をさせていただきます。
ワクチン接種は午前中にお越しください
《万が一、具合が悪くなったときに診察時間内に対応できるため》
ワクチンで予防できるワンちゃんの病気には次のようなものがあります。
『狂犬病』
ヒトを含む全ての哺乳類に感染する危険のある病気で、発症後の死亡率は、ほぼ100%。
確立した治療法がない大変危険な病気です。
日本では1956年以降発生は認められていませんが、世界ではむしろこのような国のほうが珍しくアメリカやヨーロッパでも毎年数名の死者が出ています。
ワンちゃんでは年1回の狂犬病ワクチンの接種が法律により義務付けられています。
- 生後3ヶ月目以降のワンちゃんは飼い始めてから1ヶ月以内に1回
- その後は毎年1回注射を受けなければなりません。
また、交付された注射済票を必ずワンちゃんに付けておかなければなりません。
※狂犬病ワクチンは後述する混合ワクチンには含まれていませんので、単独で接種する必要があります。
【犬ジステンパー】
この病気に感染し発病すると、40℃以上の熱が出て食欲が無く元気も無くなります。
その後、一旦熱が下がり回復したかのように見えますが、再び発熱し食欲も減退
発熱を繰り返し、目やに、咳、膿性鼻汁、呼吸困難、食欲不振、消化不良、下痢、血便、脱水症状、神経系を冒された場合は痙攣を起こしたりします。
そのほかには、眼の異常、失明、皮膚炎、鼻や肉球の角化が進んで硬くなる(ハードパッド)といった症状が見られることもあります。
死亡率が非常に高く、治ったとしても様々な後遺症が残る可能性の高い病気です。
※回復した後でも失明、神経症状、歯のエナメル質形成不全が後遺症として残ることもあります。
感染経路:ウイルス感染した感染動物の目やにや鼻水、唾液、 尿や便の付着した物に接触することでから感染
近距離の場合には空気感染もします。(潜伏期間は7~10日)
治療:犬ジステンパーウイルス自体に有効な治療薬はありません。
そのため、治療は点滴や抗生剤、抗けいれん剤投与などによる支持療法や対症療法が中心となります。
予防:犬ジステンパーの予防は、ワクチン接種が有効です。
とくに飼い始めの子犬の場合は、適切な時期・回数のワクチンを接種することが大切です。
動物病院に相談してワクチン接種を受けるようにしましょう。
【犬パルボウイルス感染症】
おもにワクチン未接種で体力や免疫力の弱い子犬や老犬に感染が見られます
・妊娠中のメス犬に感染すると、流産や死産を起こします
1腸炎型
2心筋炎型
腸炎型通常4~7日間の潜伏期間のあと激しい下痢や嘔吐・血便が出たり、貧血・脱水症状がひどくなると数日で死亡してしまう事があります。
心筋炎型呼吸困難や心臓発作のような症状を起こし子犬では突然死を引き起こすことがあります。
伝染性が強く死亡率も非常に高い怖い病気です。
感染経路:便や嘔吐物などを他の犬が舐めたり触ったりすることで接触感染します
※ パルボウイルスは自然界で半年~1年はそのままの状態で生存するので、汚染された飼育環境の消毒が不十分の場合は他の犬にも感染が及ぶことがあります。
治療:犬パルボウイルスに有効な薬剤は、残念ながらありません。そのため脱水症状やショック状態をやわらげる支持療法をおこないます。
予防:ワクチン接種が有効です
【犬伝染性喉頭気管炎】犬アデノウイルス2型
アデノウイルスによる感染症で、パラインフルエンザウィルス等と一緒に咳や鼻水・発熱・気管支炎・扁桃炎などの「ケンネルコフ」の病原体となります。
ケンネルコフになると、咳や発熱などの症状が急に現れます。
運動したり、興奮したりした時や気温・湿度の急な変化があった時に咳が多くなり、発作性の咳のためゲーゲーと吐くような様子がみられることがあります。
ウイルスの単独感染では軽い症状の場合が多く、ほとんどは1週間~10日前後で回復しますが、ほかのウイルスや細菌にも感染(混合感染)した場合や、抵抗力や体力の少ない子犬や老犬が感染した場合には、食欲や元気がなくなり、高熱や膿のような鼻汁を出すようになり、ときに肺炎を起こして死亡することもあります。
感染経路:犬パラインフルエンザや犬アデノウイルス2型などのウイルス、気管支敗血症菌といった細菌などが、複数種感染することが原因で起こります。
接触感染や飛沫感染で移るためワンちゃんが集団で生活する環境下では、1頭が感染すると他のワンちゃんに次々と伝染してしまうことが多くみられます。
治療:合併症がなければ自然治癒しますが、咳などの症状が強ければ症状に応じて抗生剤や鎮咳剤、気管支拡張剤などを投与します。
予防:ワクチン接種が有効。日ごろから愛犬の体調管理をしっかりと行い、咳をしているワンちゃんとの接触を避けるようにしましょう
【犬伝染性肝炎】犬アデノウィルス1型
こちらもアデノウイルスによる感染症で、肝炎を主体とし40℃前後の発熱、嘔吐や下痢、食欲不振などが起こります
重度の場合は、肝臓の機能不全による肝性脳症や低血糖からくる神経症状(無気力、虚脱、昏迷、昏睡、痙攣発作など)や、出血傾向(皮膚の点状?斑状の出血、鼻血、下血など)が見られ、ときに脳炎が起こることもあります。
回復期にはブルーアイ(角膜が浮腫を起こし、青白く濁って見える)や前部ブドウ膜炎が見られます。これは通常回復していきますが、時に緑内障や角膜潰瘍に進行することがあります。
※子犬では突然死することもあります。
感染経路:感染動物の涙・唾液・鼻水・尿・便からの接触感染。
回復した子の分泌物にも約9ヶ月間は存在するのでご注意ください
治療:有効な治療薬はないので、点滴・輸液・抗生剤の投与での支持療法になります
予防:ワクチン接種が有効です
【犬コロナウイルス感染症】
主に冬場に腸炎を引き起こす感染症です。
症状:下痢や嘔吐。
パルボウイルスと混合感染すると症状はいっそう重くなるため、同時に予防することが重要です。
感染経路:感染動物の便(散歩中にフンの匂いを嗅いだり、舐めたりすることで感染)
治療:輸液・食事制限・抗生剤
予防:ワクチン接種が有効です
【犬レプトスピラ病】
ネズミなどによって媒介される細菌によって腎臓や肝臓が冒される怖い伝染病です。
レプトスプラ症は人獣共通感染症(ズーノーシス)で人は保菌動物の尿で汚染された水や土壌から経皮的あるいは経口的に感染します。
1黄疸出血(ワイル)型
2カニコーラ型
黄疸出血型嘔吐・下痢・歯茎の出血や黄疸が見られる
ひどい場合は発病後わずか数時間から数日で亡くなるケースも見られます。
カニコーラ型40℃前後の高熱・結膜の充血・嘔吐・下痢(血便)を起こす
末期には脱水や尿毒症を起こし、高確率で死に至ります
2型ですが、この他にも色々なタイプがあると言う点とアウトドアで活動するワンちゃんほど感染しやすいので注意が必要です。
感染経路:感染動物(ねずみやイヌネコなど)の尿や細菌の染み込んだ土壌・水たまりから感染します。
粘膜や結膜・傷ついた皮膚から(経皮・経口・経鼻・経胎盤etc・・)
治療:抗菌薬の投与
予防:ワクチン接種が有効です。
子犬のワクチンについて
子犬のワクチンは
- 生後約2ヶ月目からスタートして
- 1ヶ月ごとに計3回のワクチン接種をお勧めします。
3回目のワクチン終了後は大人のワンちゃん同様、1年に1回のワクチン接種で大丈夫です。
子犬に3回のワクチン接種をおすすめするワケ
子犬は産まれてすぐに母犬の母乳を飲みます。
この、初めての母乳を『初乳』と言います。
初乳には母犬の持っている免疫が含まれていて、まだ病気に対する抵抗力を持たない子犬の体を様々な病原体から守る働きをします。
この初乳に含まれる免疫を、『移行抗体』と言います。
ただこの移行抗体は出生後、日を追うごとに少なくなっていきます。
母犬からの免疫力を失った子犬は病原体に対して無抵抗な状態ですので、それを補うためにワクチンを接種しなくてはいけません。
しかし、母体から貰った移行抗体が多く残った状態では、ワクチンの成分(抗原)を母犬の抗体がやっつけてしまい 思うように効果が上がらないので、ワクチン接種は移行抗体の残量が20%以下に減った状態がベストとなります。
移行抗体の残量がしっかりと把握できて、ベストなタイミングでワクチンが接種できるのであれば、本来なら子犬のワクチン注射の重ね打ちは必要ありません。
しかし、移行抗体の残量を正確に知ることはできません。
そこで、一般には母犬の移行抗体の残量が20%以下まで減っていると思われる時期を推測して2~4回ほどワクチン接種する方法が取られています。
移行抗体は子犬の健康状態や初乳の量、母乳中の移行抗体の状態等によっても変化しますが 早ければ生後40日程度(緑色の線)で残量20%以下まで低下しますが、低下が遅い場合は生後120日程度(赤色の線)でようやく20%以下になります。
そのため、本来であれば図中それぞれの矢印の位置でのワクチン接種がベストですが、
当院では初回のワクチン接種を
1回目・・・生後60日目(黄色の矢印)、
2回目・・・生後90日目(青色の矢印)、
3回目・・・生後120日目(赤色の矢印)
で接種するようにワクチンプログラムを組んでおります。
☆当院では・・・
5種混合ワクチン
【犬ジステンパー】
【犬パルボウイルス感染症】
【犬パラインフルエンザ】
【犬アデノウイルス2型感染症】
【犬伝染性肝炎】
8種混合ワクチン
【犬ジステンパー】
【犬パルボウイルス感染症】
【犬パラインフルエンザ】
【犬アデノウイルス2型感染症】
【犬伝染性肝炎】
【犬コロナウイルス感染症】
【犬レプトスピラ病】
・黄疸出血(ワイル)型
・カニコーラ型
※レプトスピラのワクチンには2種類入っています
狂犬病予防注射
【狂犬病】
・・・を予防できるワクチンを接種することができます。
ワクチンについて(猫ちゃん編)
【猫ウイルス性鼻気管炎】
ヘルペスウイルスによる感染症で俗に「猫カゼ」などとも呼ばれています。
くしゃみ、鼻水、よだれ、咳、重度の結膜炎、目やになどの症状が見られます。
40℃以上の高熱を出したり、食欲も無くなっていきます。
生後6ヶ月未満の子猫などは、病気の進行が早く、死亡する危険性も高い。
また、症状が表れなくても、猫の体の抵抗力が衰えた時に発病する事もある。
感染経路:飛沫感染(くしゃみ・鼻水)・接触感染(食器や衣服)・排泄物からも感染する
治療:インターフェロンや抗生物質による治療。鼻水・涙・よだれはこまめにふき取る
※治療を中途半端で止めてしまうと、体内にウイルスを持ったままだったり、慢性の鼻炎になってしまう恐れもあるので、完治するまで治療を続ける事が大切です。
予防:ワクチン接種が有効
人の手を介してからも感染するのでねこちゃんを触った後は手洗い・消毒をする
感染ねこの使った食器・トイレは塩素系の漂白剤で消毒をする
【猫カリシウイルス感染症】
感染初期は猫ウイルス性鼻気管炎と似た症状が出ますが、病気が進行すると舌や口の周囲に口内炎や潰瘍ができたりします。時には急性の肺炎を起こして死亡することもあります。
感染経路:ほとんどが感染猫との接触感染ですが、空気感染や手、衣服、食器などの事もあります。
1度この病気にかかり回復した猫には、体内に免疫ができるのでほとんど再発することはありませんが、完治していないとウイルスが体内に残り、他の猫の感染源にもなってしまいます。
治療:インターフェロンや抗生物質などによる治療。
肺炎などがこじれると、治療が難しくなるので早めに治療を受けましょう。
予防:ワクチン接種が有効
感染ねこの使った食器・トイレ等は塩素系の漂白剤で消毒する
【猫汎白血球減少症】
パルボウイルスによる感染症で、血液の成分の一種で主に免疫を担当する白血球が極端に少なくなる病気です。
40℃前後の高熱、嘔吐、食欲がなくなり、下痢が始まると血便になり脱水症状で衰弱してきます。
体力の無い子猫などは1日で死亡することもある怖い病気です。
妊娠中の母猫が感染した場合には、死産や流産が多く、もし出産できても子猫に先天的な異常が残ってしまう事があります。
感染経路:感染猫との接触や、便・尿や吐物で汚染されたものと接触することで感染します。
ウイルスは猫の体の外に出ても長時間生きる(乾燥状態にあっても、1年以上も生存する程抵抗性が強い)ので、人間の服や靴などの間接感染もあるので、完全室内飼いの場合も感染の可能性がある。
治療:ウィルスを殺滅する薬はないので、インターフェロンや抗生剤・点滴などの治療
予防:ワクチン接種が有効
多頭飼いの場合病気を他のねこちゃんに移さないように厳重に隔離しましょう
環境中でチリやホコリに混じりウイルスが長期存在するので、便等の取扱いにも注意。
【猫白血病ウイルス感染症】
レトロウイルスが病原体の病気で、白血病やリンパ腫などの血液のガン、貧血、流産などを起こします。
特に貧血状態には注意が必要で、リンパ肉腫、腎臓病、慢性口内炎、貧血、白血球減少症、流産などを引き起こす場合があります。
そして、病気に対する抵抗力が弱まるため病気や傷が治りにくい、下痢がつづく、歯ぐきが白い、痩せた、元気がない等の症状がある場合はこの病気の可能性もあります。
別の様々な病気も併発しやすくなります。
感染してから発症までの期間が大変長く、その間は見かけ上健康に見えますが、ウイルスを唾液中に排泄し、他の猫ちゃんへ病気を移してしまう危険があります。
発症した場合は50~70%が感染後2~5年以内に死亡してしまいます
感染経路:感染猫の唾液、涙、尿、便、血液、乳汁に含まれるウイルスによります。
ケンカなど咬み傷、グルーミングや食器共有、感染した母猫などからの感染が多い。
胎盤感染(妊娠中の母から子へ)の場合は、流産、死産することが多く、生まれても育つことが少ない。
感染力は弱く、1~2度、感染猫の唾液が付いたぐらいでは感染しないともいわれている
治療:ウィルスを殺滅する薬はありませんが、猫白血病ウイルスを持っているキャリアで、発病しても症状が落ち着いていれば現在出ている症状を改善することにより、延命も可能になります。
インターフェロン治療でウイルスを弱め、猫の免疫力を高めます。
激しい細菌感染には、抗生物質の投与、白血病やリンパ腫が発症した場合は抗ガン剤を使用します
予防:ワクチン接種が有効です
ただし、他の猫と接触することがない場合はワクチン接種は必要ありません。
同居猫がいる場合は、感染猫との接触を避ける(ケンカ防止のために去勢・避妊手術をうけておく)
定期健診を必ず受け、何か変化があればすぐに病院へ連絡する
【猫免疫不全症症候群】
通称「猫エイズ」とも呼ばれる病気です。
FIV(Feline immunodeficiency virus = ネコ免疫不全ウイルス)に感染する事により、ネコおよびネコ属の哺乳類(トラなど)が引き起こす諸症状を指します。
初期ではほとんど無症状なので感染に気がつかないことが多く、感染猫が他の病気(カゼや猫白血病など他の感染症)で受診して検査で、感染がわかる場合が多い。
名前の通り「免疫」機能が「不全」状態になってしまうため、通常であれば何ら問題ない細菌やウイルス等で非常に重い症状を出してしまったり、腫瘍細胞の増殖を抑えられなかったりした結果死に至る病気です。
免疫系に影響するため病気や怪我が治りにくい、体重の減少、下痢、肺炎、リンパの腫れ、がんなど様々な症状がみられます
ほか約50%に口内炎や歯肉炎など口腔疾患がみられ、貧血、慢性の鼻炎や腸炎、結膜炎なども多く、まれに、皮膚疾患、膀胱炎、外耳炎、神経疾患などもあります
感染経路:ウイルスは唾液に多く含まれるため、感染猫とのケンカによる咬み傷から感染します。
母猫がエイズキャリアでも感染する子猫は少なく、もし母親や同居猫がエイズキャリアで他の猫とのグルーミングや、食器、トイレを一緒に使っても感染しにくいといわれています。
治療:無症状の場合は治療は必要ありません
症状により適切な治療をします。インターフェロン治療でウイルスを弱め、猫の免疫力を高めることを行うことも有効です。
ストレスの少ない生活をさせ、十分な栄養を与える
予防:ワクチン接種が有効
(2008年に猫免疫不全ウイルス感染症のワクチンが日本でも発売になりました)
完全室内飼いへ変更し、すでに感染している猫との接触をさせない
ケンカ防止のために去勢・避妊手術を受ける
☆当院では・・・
3種混合ワクチン
【猫ウイルス性鼻気管炎】
【猫カリシウイルス感染症】
【猫汎白血球減少症】
6種混合ワクチン
【猫ウイルス性鼻気管炎】
【猫カリシウイルス感染症】[3種類]
【猫汎白血球減少症】
【猫白血病ウイルス感染症】
猫エイズ予防注射
【猫免疫不全症症候群】
・初めての年には3回接種し、次の年から1年に1回接種を行います。
・・・を予防できるワクチンを接種することができます。